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クレクは、彼が男の顔に飛び蹴りを食らわせたのだと理解した。ラジウを助けてくれた彼に刃を向けることは礼儀に反する。従って弓を降ろし彼と対峙した。
「シルキア!? てめぇ、何しやがる!?」
賊の一人が彼目がけて怒鳴り散らす。その目は驚きを隠せてはいない。
名前を知っているということは仲間なのだろうか?そんな疑問がクレクの頭の中に浮かび、弓を強く握らせるのだった。
「お前達を狩りに」
少し低い声は、はっきりと告げた。顔は仄かに口元が緩んだだけで変化はない。
はっきり言ってあまり興味がない。そう言っているようだ。
「な、何故だ!? 同じ山賊だろ!」
慌てて一歩後ずさる山賊達。シルキアと呼ばれた男は少し顔を歪めた後、馬鹿にするように鼻で笑った。
「一緒にしないで欲しいねぇ。オレ達は正義の山賊よ?」
シルキアの言葉より先に、軽い感じの声がシルキアと反対方向から飛んでくる。声の先に居たのは、濃く黒めの赤髪を左分けにしている男だった。目はシルキアよりも丸みを帯ていて悪戯っぽい緑眼だ。ただ、右目を海賊がするような三角の黒い眼帯で隠している。そして彼は子供達に刃先を向けていた男をねじ伏せていたりする。口にはクレクとは違う軽い笑みが張り付いていた。
「正義? ……山賊に正義もくそもないだろう。馬鹿」
シルキアが溜め息混じりにそう言った。
赤い髪の男はひとしきり笑ってから立ち上がり、シルキアの隣に移動する。それから口を開いた。
「というわけでさぁ。オレ達と戦う? それとも逃げる? 今回なら見逃してあげっけど?」
余裕の表情に見下すような口調。しかし、軽いふざけているような雰囲気が彼を傲慢過ぎる嫌なやつとは決して見せなかった。
男達が自分の獲物を握り締める動作を確認すると、彼の目は冷たく細められた。戦うなら容赦はしない。彼の目はそう言っていた。山賊たちはちっっと舌打ちをすると獲物をしまい込んだ。
「くそっ。アレンまでっ! 逃げるぞ!!」
その掛け声をきっかけに悔しそうな顔達は散っていく。それに軽い雰囲気の男は満足そうに笑った。
城に残ったのはラジウ達、それに無愛想と軽快な男二人。
ラジウ達を尻目に彼等は話し始めた。
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