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灯りもつけない薄暗い部屋。けれど、しっかりとした棚や質素だがしっかりとしてる絨毯。それらによって部屋の形は浮かび上がっていた。
ラジウは鞄にある程度物をつめ終わると、窓を開け放ち空を見た。
「ねぇ、クレク。僕が何やってもついてきてくれる?」
風がラジウの光る髪をなぜて、窓の内側にある布を揺らした。ラジウの目には自分の目と同じ爽やかな青が写り出されている。
ラジウの後ろ姿は、昔も今も変わらないあどけなさと、悪戯じみた雰囲気をかもしだしていて、クレクにふと笑みが零れさせる。
「当たり前ですよ。私はラジウについていきます。貴方がどう変わろうと、どんなことをしようと、味方が誰一人いなくなろうと、私は貴方について行きますとも」
「ほんとうに? 父上がいなくなったのに?」
クレクの答えに、ラジウはまだ疑うかのように言葉をかけた。ラジウは空を見上げたままで、一切クレクを見ようとしないから、クレクからは彼の表情を見ることができなかった。
「えぇ。私は前王ではなくラジウ様。貴方に忠誠を誓いましたから」
クレクは一礼をして笑む。そんな彼にラジウは窓から一気に駆けてきて抱きついた。
ラジウがクレクを見上げ嬉しそうに微笑む光景は、いつまでも変わらない部屋と同化している気さえする。
そのくらい、微笑ましい光景だった。
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