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「で、アレンさんは仕えたくないんでしょ?」
「仕えたくなんかない」
ラジウの問いに未だに頭を抱えつつもきっぱりと答えるアレン。
「じゃあさ。今まで通りでいいじゃんか。何にも変わんなくてさ」
大きくアレンに頷いてみせるラジウの顔からは自信満々さが伺えた。アレンは、目を見開いて彼を凝視する。
「ぷっ……あはははは」
が、彼は突如笑い出したのだ。笑いをこらえようとはまったくしていない。大笑いと言っていいだろう、腹を抱えて身悶えしている。
「初めからそのつもりだったね? ラジウ」
キヴィはため息交じりにラジウに言うが、彼女もまた笑い始めた。
「へへ……」
ラジウもそれにつられて笑みを浮かべる。シルキアもふっと鼻で笑った。
「ふふ。それじゃあラジウ様。帰ってご飯にでもしましょうか」
彼らを嬉しそうに見て、そっとクレクがラジウに微笑みかけた。
ラジウは彼に笑顔を返し、大きく頷く。
「うん!」
「……ふっ。俺も一緒に行ってやる」
「えっ!?」
シルキアの突拍子もない言葉に、ラジウは驚いたように彼を見上げた。
しかし、アレンはやっぱりね。と小さく呟き肩をすくめたのである。
「俺自身は貴様に負けたからな。約束は守る」
その後、シルキアは小さくラジウに耳打ちした。"それと、貴様のその馬鹿さかげんも気に入ったからな。"と。ラジウはそれに頬を膨らませてから笑った。
シルキアは一度ラジウと視線を合わせてからアレンに向き直った。
「貴様はどうする……?」
「オレ~? オレはいいや~。自由気ままに生きていくさ!サーカスとかして遊んでるよ~」
シルキアの問いにアレンはカラっと笑い、軽く言う。
それに、ふっと小さな笑みを溢し、シルキアはアレンに片手を差し出した。
アレンもニッと笑いその手をとった。
「ふん。バカだから死なんとは思うが」
「あっはっはっはー。ひっでぇー。シルキアのほうこそ、ガキに負けるような力でくたばるんじゃねぇよ? あっは、冗談だって! また会おうな!!」
軽く笑いながら会話しているアレンだが、シルキアの手に力が込められたのに慌てて繕うように言葉を並べた。そして、ぎゅっとシルキアの手を握り返してから後ずさりをし、彼の手から逃れた。
シルキアに舌打ちされたのは言うまでもない。
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