日常

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そんな様子を暁は人数分のトーストを乗せた盆を持ったまま、立ち止まって見ていた。うぐぅ…と呻き声を上げてボサボサ頭が顔を上げたのは飛鳥の手元にスプーンがなくなり、ナイフを構えた時だった。 「アンタ…アタシを殺す気?」 そんな双子の妹の様子に飛鳥は眉を顰める。 「アスカ…お前顔洗ったか?」 ボサボサ頭改アスカはまだ覚醒しきって居ない顔で兄を見、やや間を置いて 「洗ってないや…」 ボソボソと返答し、席を立つ。 「ついでにルシエ起こして来い」 さもダルそうにアスカは手を振り、顔を洗うべく洗面台に向かった。それを確認して飛鳥は溜め息を吐くと、鍋から茹で卵を取り出して皿に乗せる。オムレツと茹で卵の皿とカップを盆で運び各々の席に置いた。暁もそれに習いトーストを置いていき、席に着く。 「も少し待ってな」 アスカが消えた先を見て、ついで暁を見て飛鳥は苦笑して見せた。暁もそれに釣られて苦笑する。 …少し経った後、少年の悲鳴が聞こえた。 「起きたかな」 既に日常と化した少年の悲鳴に飛鳥は思わず幸せな苦笑を漏らした。 「おはよ~」 先程とは打って変わってすっきりとした顔でアスカがやって来る。それにやや遅れて少年が首を擦りながらやって来た。 「おはようございます」 「おあよ~ごさいまふ…」 大丈夫ですか?と少年に救急箱を見せながら暁は首を傾げる。 「暁さ~ん…湿布貼って…」 朝から湿布だよ~…と少年は恨めしそうにアスカを見るが、当のアスカは知らん顔をしてテレビを見ている。 「ルシエ…髪、切りませんか?」 暁は少年…ルシエの髪から白いうなじを探し、髪を巻込まない様に湿布を貼ってやる。 「ん~切った方がいいかな」 湿布のヒヤリとした感覚にルシエは微かに身を震わせ、飛鳥に問う。ジッと飛鳥はルシエを眺めるが首を横に振り「まだ大丈夫だろ」と言ってからハー…と溜め息を長く吐いた。
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