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「…誘拐、ですか?」
此所の所長だと思しき男の顔が怪訝そうに曇る。その様子に紫藤も我ながら無茶を言っているなと思う。
男の容姿は温厚な顔立ちで髪型はやや長めのハンキッシュ。色は焦げ茶といったところか。服装はダボダボのTシャツにジーパンでTシャツに関してはダボダボ過ぎて襟首から鎖骨全体が見えている。
「ターゲットの写真とかありますか?」
紫藤は頷くとポケットから手帳を取り出し、しまって置いた雑誌の切れ端を男に渡す。
雑誌の切れ端を見て男は「ん?」と首を傾げ、不思議そうなまなざしで更に顔を近付けて切れ端を凝視した。
「…なんか見た事あるような」
ねぇ?と同意を求めて男は背後ろのデスクで控えていた細身の人物(外見があまりに中性的な為、男女かハッキリと断定出来ない)を振り返る。
容姿は、無感動とまではいかないがあまり起伏のなさそうな顔立ち。髪は金色に近い黄土色の短髪、服装は白いYシャツと黒のズボン。背筋をしっかりと伸ばし、ノートパソコンを構えている。
「…失礼します」
音も無く立ち上がると所長と紫藤が座っているソファに近付き、切れ端を覗く。
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