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「そういえば二人はいつから知り合いなんですか?」
シヴァが答えた。
「俺が勇者になるまえだから…十年前か?」
「ええ。私がまだマスターの所で修業していたから。ほんと、あの時は驚かされたのよ」
「そうか?」
二人は顔を見合わせて笑った。
「俺は勇者になる前冒険家だったんだぜ」
「そうそう、大陸でも指折りの冒険家で、シヴァのせいで色んな遺跡が荒らされたんだから。しかも、暗殺者としても有名だったの。」
リリィはさも自分の事の用に言う。
深夜になり、教会内は不気味な闇に包まれていた。
リリィとシヴァは寝てしまい、ユリアは小さなランプで数日前リリィから習った“制御の祝詞”を練習していた。ユリアはシヴァの手下になる気はさらさらなかったが、リリィの話を聞くと、どうやら自分に特別な力があり、その力は強大なものらしい。この力を操れればエリス王国の繁栄に役立つかもしれない。ユリアは秘めた野望を胸に練習に励んでいた。ユリアはエーテルの吸収を常時解放しているので制御さえできれば魔術を使える。しかしなかなか祝詞は発動しない。何がたりないの?ユリアが考えていた時だった。
「ゲーニの様子を見に来たら、おもしろいものに会えたわ」
ユリアは身体をビクッと震わせて教会のドアを見ると、淡い紫の髪の女性が立っていた。月光に照らされたその耳の形は、エルフ人特有のものである。ユリアが二人を起こそうと後ろを振り向くと、すでに二人は剣を構えていた。シヴァが低い声で言う。
「すでに囲まれてやがる…」
リリィは杖を高らかに掲げ、祝詞を唱えた。杖はエーテルを集めやすくする武器だ。途端に周りが明るくなる。ユリアはあまりの光に目を伏せたが、シヴァに腕を掴まれ教会から脱出した。廃墟と化した街中を走りながらシヴァが叫ぶ。
「リリィ!ユリアとうまく逃げろ!!」
二人を見送り、シヴァは広場で止まる。
「出てきやがれ!ネフィア!」
エルフ人のネフィアが落ち着いた足取りで広場に出て来た。
「勘違いしないで。私はあなたの帰還を祝ってるのよ?」
シヴァにネフィアは近付く。
「よるな…周りの奴らはゲーニ人だな」
「反対したんだけどね…これが、私からの愛のプレゼントよ。受け取りなさい!!」
シヴァの頬の近くを弓矢が掠める。シヴァは剣を抜いた。
「恨むなよ…」
シヴァは祝詞を唱えた。すると剣が周りの闇に溶け込んだのだ。
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