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「リリィさん…き…強力な祝詞で…」
ゲーニ人達はかなり警戒しているようだった。
「私は訳あってエーテルが少ししか吸収できないい身体なのよ…」
ユリアはもう一度祝詞を唱えた。が、何も変わらない。痺れを切らしたゲーニ人がついに剣を振り下ろしてきた!
その時だった。ユリアは身体の中から力が沸き上がるのを感じた。次の瞬間、ゲーニ人の振り下ろした剣が宙を舞った。
「な、なんだ!?この結界は!!」
リリィも驚いていた。
「祝詞を唱えてないのに…結界を創った…あ、ありえない…」
ユリアの綺麗な青い目が灰色に染まっていた。
「……シネエエ!!」
ユリアが手を広げると、結界がさらに広がり、ゲーニ人達の身体を焼いて灰と化した。シヴァはその光景を目の当たりにして思わず絶句した。
「なんなのあの子…あなた何をしたのよ!!!」
ネフィアが血相を変えて叫んだ。シヴァは呟いた。
「あいつ…灰色の瞳をしてる…あれは…フル・ディフェンサー?…まずい!!!」
シヴァは結界の広がりを止めるため立ちすくむリリィに叫んだ。
「ユリアを止めろ!!このままだと“廃人”になっちまうぞ!奴のエーテルで解除しろ!!」
シヴァは祝詞を唱えると、剣が光り出し鍵の形になった。リリィも祝詞を唱える。内外から結界を破戒した。ユリアは次の瞬間目を閉じて倒れた。ネフィアが抱き起こしにいく。シヴァは剣をしまいユリアの様子を伺う。リリィも煤を払いながら駆け寄る。周りは火の海と化していた。
……ユリアは目を開いた。
此処は…?ユリアは身体を起こそうとしたが激痛が走りまた倒れこんだ。やっと目が慣れると周りの景色がはっきりしてきた。
花だ。
見渡す限りに花畑が広がっていた。
「此処は…シヴァさん…リリィさん…」
「人界じゃこんな場所ないでしょ…?」
ユリアは驚く気もなく頭上を見た。そこには綺麗なピンクの髪の女性が覗き込んでいた。
「貴方は…?此処は何処?…」
女性は立ち上がり、遠くを見た。
「ここはあなたの夢の中よ…私はクラウゼ…」
ユリアはやっと起き上がり、どこまでも続く花畑を見渡した。
「信じられないわ…じゃあ貴方は何処から来たの…?」
風がまた吹き、色とりどりの花が風に揺れた。
「…花はね、自分を美しく見せるために自分の力を使い果たしてしまうのよ…滑稽よね…」
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