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シヴァとゲランは握手し、向かいあって座った。
「さて。こんな国境近くの田舎基地に勇者が何の用かな?」
ゲランは紅茶を一口飲んで聞いた。
「何を言っておられますか。私の中では今も将軍のままです。」
ゲランはまた笑うと、今度はユリア達を見た。
「リリィも変わらず元気そうだな。で、失礼だが貴方は…?」
ユリアは戸惑った。ここで自分の身分をばらしてもよいのか?
「エリス王国第二王女、ユリアです。」
シヴァが話すとゲランの顔が変わった。
「まさか…いや確かに故王妃様に似てらっしゃる…」
ユリアが驚いて聞く。
「お母様を知っているのですか!?」
「もちろん。エリス王妃様とはよく皇帝閣下が面会なされておりました。王妃様の事はお気の毒で………」
ユリアは俯いてしまった。幼い頃の王妃との記憶が甦っているのだろうか。
「ユリアちゃん…行きましょう。」
リリィが連れ出し、シヴァはようやく喋り始めた。
「すいませんね…」
ゲランも少し驚いていた。
「王妃はもっと気の強い方だったのにね…」
「気の強さは姉の方に遺伝したようですよ…で、本題なのですが…」
「この老いぼれにできることがあれば。」
「バイル男爵の屋敷は何処にあるのですか?」
ゲランの顔が少し固くなった。
「何故かな?よりによってあの“ドラキュラ”男爵に…」
「マートラの大鮫を倒すのにどうしても必要なのです。」
シヴァは言った。ゲランは少し考えた後、言った。
「しかしな…奴には外出を禁じてるからな…外には出させんぞ。」
「大丈夫です。」
「では、もしもの時のために、兵を一人連れていってもらえるかな?まあ、用心しなければな。ええと、今夜奴の使いが来る。そいつに話して着いていくといい。」
「ありがとうございます。」
シヴァは立ち上がりゲランも立ち上がり、握手した。
「奴にはくれぐれも注意するようにな。」
「何言ってるんですか。俺は仮にも炎の勇者ですよ?」
シヴァは笑いながら応接室を後にした。シヴァは基地の外のベンチにいたリリィ達にこれからの事を話し、シヴァ達は夜まで宿屋で休むことにした。三日月が空に不気味に浮かんだ夜。シヴァ達の部屋の扉がノックされた。リリィが開けると、まだ若い男の兵士が立っていた。
「マートラ軍兵士のクラバーです。少しの間ですがよろしくお願いします!!すでに馬車が着いております。」
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