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…………30分後。シヴァ達は宿屋の前に停めてあった馬車に乗っていた。馬の綱を引いているのは不気味で身長が物凄く高く、寡黙な男だった。クラバーはとても上機嫌だ。
「いやあ、まさか炎の勇者のお供ができるとは…感激です。」
シヴァは寝たふりをしている。リリィと、フードを被ったままのユリアが彼の話を聞いていた。
「いや、実は私、マートラ人じゃないんですよ。エリス人なんですよ。」
ユリアが微かに動く。
「数年前に夫婦でマートラに来たんですけど、エリスは大丈夫なんでしょうか。」
ユリアはすっかり忘れていた。シヴァとの旅に夢中で国の事など頭から消え失せていた。ユリアは途端に恐ろしくなった。自分は国民を捨てたと思われているのだろうか…姉のナージャには手紙を送っただけだ。エリス王国は大丈夫であろうか…
「いや一応故郷ですから、気になるんですよ。それに最近こんな戦争久しぶりだったし…エリスは国家存亡の危機だとか…」
リリィはあいづちを打つこともやめ、ジャングルの上に浮かぶ三日月を見ていた。
「けど、多分大丈夫ですよ。何たってあのエリス王女姉妹がいるんですから。いやー一度だけ見たことがあるんですがね…とても美しい姉妹でしたよ…特に妹のユリア様がとても美しい方でした…」
リリィは少し笑って、ユリアの方を見た。ユリアはフードの中で赤くなる。奇妙な馬車はついにジャングルに続くやっと馬車が通るぐらいの細い道の前にたどり着いた。シヴァはずっと不気味な馬使いと話していた。が、シヴァが向き直って言った。
「武器を持て。この森はあぶねえからな。」
クラバーは不安げに言う。
「魔物がいるんですよね…確か」
シヴァは鼻で笑う。
「魔物ならまだ優しいぜ…まあ馬車から顔を出さない事だな」
ユリアは低い体制であまり上手に使えない剣を持ちながら思った。なんであの馬使いは襲われないのかな…
「あいつは男爵に魂を売ったから、魔物が反応しないのさ」
シヴァがユリアの心を読み取ったかの如く言ったのでユリアは驚いてしまった。シヴァはウインクして、
「読心術。俺、天才だから。」
ユリアはそっぽを向いてしまいリリィとクラバーは笑った。
「そういえば、フードの方顔を拝見したことが…」
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