001 高瀬 翔の受難

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屋上の扉を閉め、鍵をかける。 下の方からは、入学式の司会者の声が既に鳴り響いていた。 「ちょっと寝過ぎたかな…」 出来るだけ静かに階段を下りて、体育館への道を歩く。 誰もいない道は、静かでいい。 顔を上げると、満開の桜が綺麗に咲いている。 (そういえば、ここに桜があったな) 少し見ていると、体育館の方から、風と共に声が響いてきた。 「おーい、早く入れー」 僕はしばらくその声を無視してから、中へ堂々と入った。 こちらに向けられる視線。 嫌でも目に入る。 元々僕の名は中学1年生から高校3年生まで全校生徒に広まっているらしい。 理由は簡単。 僕は学園史上初、中学3年間生徒会長で居続けたから。 投票で勝てば、誰でも生徒会長になれるのが、鷹岡の特徴の一つ。 ついたあだ名は、 "(鷹岡の)王子(様)"とか。 当然、最初はちらほら呼び出しみたいのを食らったこともあったけど、みんな弱かった。大して強くない。 というか、本気でどうこうするつもりはなかったのだろう。 会長になれなかった悔しさを、とにかく僕にぶつけたかったのだと思う。 とにかく、どうにか切り抜けてきたら、学園でそうやって僕を呼び出すような生徒はいない。 そもそも人気投票だから。
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