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今の季節、日が落ちるのはとても早い。
大体の人々は早い夜の訪れに急いで家路につくのだが、なにせここは国の中枢である。
中心街から少し離れたこの場所でも、それなりに人通りはあるのだ。
なので当然、騒ぎがあると人は集まってくる訳で。
「何だ何だ?出し物か?」
「いや、喧嘩らしいぞ」
道ゆく人々がエマ達から少し距離を置いてだが、わらわらと集まって来た。
「エマさん、まずいですよ。僕達めちゃめちゃ目立ってますって…わぁっ」
「お前は黙って見ておれ」
人が集まって来たため、エマはアーリィのフードを掴むといささか乱暴に被せた。
「ですが、エマさん。喧嘩はいけません、暴力反対です」
アーリィは被せられたフードの脇を握り、自分よりも背の低いエマを見下ろして言った。
自分はこれでも一応聖職者である。無益な争いはなるべく避けたい。
(いつも弱い僕だけど、こういう時にはちゃんと言わないと…!)
グッと拳を握り、いつもより強気で挑んだアーリィだったが
「…儂の言葉が聞こえておらなんだか、アーリィ?」
「いえ、ばっちり聞こえました」
エマの睨みの前に小さな勇気は一瞬にして崩れ去った。
「元はと言えば…儂がこんな惨めな想いをせねばならぬのも、全てお前が元凶なのじゃぞ」
「えぇっ!どうしてそうなるんですか?!」
「当たり前じゃ!お前のその紛らわしい容姿のせいで…男共の関心はお前にしか向かぬのだ!!」
エマは声をあらげてアーリィに掴みかかる。ローブの首元は大分引っ張られ、皺が寄った。
「そんな無茶苦茶な!僕だって、好きでこんな顔に生まれた訳じゃないんですよ?!」
「ほう…それは儂に対する嫌味か。世の女達が聞けばさぞかし不愉快じゃろうな、えぇ?今すぐ整形して来い、今すぐ」
掴みかかっているエマの手首を握って、何とか体を離そうとするのだが。言い分が逆鱗に触れてしまったため更に、状況は悪化していく。
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