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気がつけば、既に時計は3時を指している。
何で自分がこの場所にいるのか未だに解らない…
ついさっきまで自分の部屋でテレビを見ていた記憶ならある。
しかし、この場所まで歩いてきた記憶もないし、ましてや連れ去られた記憶も無い。
では、何で自分がこの場所にいるんだ…
考えても考えても答えは出ない。
それもそのはず…通常の現実世界ではこんな事は起こりえない事なのだから。
今目の前にある光景を、誰かに話したところで確実に信用してもらえないだろう…
もし信じられるやつがいるなら、それは精神異常者以外の何者でも無いとしか思えない。
そう、信じられるもんか…
自分と全く同じ人間…いや、
自分自身が目の前にいるんだから。
言葉でどう伝えたらいいのかは解らない。
ただ、今この真っ暗闇の空間の中で…目の前にもう一人の自分がいるとしか言いようが無い。
俺は思い切って…一言だけ口にしてみる事にした…
「お前…誰なんだ?」
7月19日。
いつもの様に俺は学校に通っていた…
何も無い平凡な毎日を送る俺にとって、学校に通うことは日課に過ぎなかった。
その日も、通学中に何か面白い事件でも起きないか、などと不可思議な事を考えつつ…
校門前の坂道を勢いよく駆け上がっていた。
チャイムぎりぎり、いつもの様に窓際の特等席に腰を下ろす。
数秒後に決まった言葉が来るのを解っていながら…
「今日もギリギリ間に合ったみたいだな~!いい加減後5分でもいいから早く起きようとか思わないのか?」
眠気たっぷりの俺の脳に、ウイルスと言う名の決まり文句を投げかけてくるコイツは…
全く俺が望んでいないのにも関わらず、数年取り付いている亡霊のような存在「椎名秋和」だ。
「5分早く起きるくらいなら、俺は遅刻で構わん…」
なんで好き好んで朝の眠りと言う時間を削らなくてはならんのか…俺には理解できん。
「はいはい、そうですかー!そろそろ卒業も近いんだし…いい加減社会人的行動に移れるようにしろよぉ~」
自分の母親にでもなった気分なのだろうか…朝からこんなセリフを同等の人間に言われるのは誰でも気分の良い物ではないだろう
目の前で念仏のように、卒業がどーとか言っている言葉を、仕方なく子守唄にしてやり俺は二度寝と言うものをこなす事にした…
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