私とピアノ

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名高いピアニストが盲目になった。 彼は絶望していた。譜面が読めないと言うことは音楽家にとって重大なことである。 誰かの弾いた譜面を聞き取るしかない。 だが、【誰か】が弾いた旋律にはその【誰か】の思いが入ってしまっている。 ストレートに作曲者の気持ちが伝わってこなかった。 彼はピアノを弾かなくなった。 彼のグラントピアノには日々埃が積もっていった。 彼の音楽家としての道は、彼自身が閉じた。 閉じた…つもりでいた。
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