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と言うより約一匹。
(おのれ~……ッ!姉御の隣は俺っちのポジションだったのに~……ッ!!)
カラスが背後から、誠二を恨むような眼で睨みつける。
そして更に後方には赤い髪の少女が茜を凄い形相で睨んでいた。
(おのれッ茜…!!私は私は……負けていませんわ!!)
(何か寒いな……?)
背後からの殺気や怨念じみた想いを、無意識に感じとったのだろう、誠二の体がブルッと震えた。
「あっ、そういえばミトはどうしたの?いつも近くに居るのに……」
「実は……いきなり何処かに行ってしまって……」
「そうなんだ」
「とっても心配です」と表情一つ変えずに茜は言う。
とても心配しているとは思えないな……と思ったが、口が裂けても言えない。
「しっかし、こんなに心配してるのに……何処に行ったかねぇ~…ミトは?」
そう言って辺りを見渡した瞬間、誠二の視界にミトが飛び込んでくる。
電柱に隠れているつもりなのだろう、羽根が片方出ている。
そして、怨念が籠った瞳でこっちを見つめている。
「本当にミト吉は何処に行ったんでしょう……どうかしたんですか?」
茜にそう聞かれた誠二は、ニッコリと笑顔を浮かべて「何でもないよ」と言って、歩き出す。
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