世界

1/4
3人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ

世界

彼は孤児だった。   生まれてすぐにある教会の前に捨てられた。 雪の降る、寒い冬の朝だった。   しかし、神父に発見された時の彼は泣き叫ぶ事もなく、ただスヤスヤと寝息をたてているだけだった。   その燃え盛るように紅い髪と両の眼(まなこ)が、凍てつく冷気を寄せ付けないかの如く。   毛布に包まれた彼の胸元には一枚のメモがあった。 「どうかこの子に神の御加護を。この子の名は…」       それから10年――― 赤ん坊は少年へと成長していた。 勉強嫌いだが活発で、歳の割に背が高くバスケが大好きな普通の少年に。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!