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〔2〕
午前2時半をまわった頃、一度は消された暖炉に再び炎が灯された。
談話室には再びペンションの招待客や従業員の面々が揃い、隅で横井川がそれを見つめている。
ピリピリと張り詰めた空気の中、竜彦は切り出した。
「ようやく事件が終わって、早く島を離れたいのも山々ですけど……皆さんにはもう少し辛抱してもらいます」
「どういうつもりだ、二見くん……。ここにはもう用はないんだろ?」
詰め寄るような口調で楠伊が語りかける。
「まぁまぁ……。もちろん、ここに戻ってきたのには理由があります」
それから竜彦は一呼吸置いてから言った。
「……事件の真相を明らかにするためです」
「ちょっと待って下さいよ……!! “事件の真相”って……二見さんも見たでしょ? 覇斎さんのあの姿を!!」
鈴道がいつになく強い口調で言い寄る。
他の者たちも同様、当惑した様子だ。
まぁ、それも無理ないか。
「確かに、覇斎さんは全てを告白してこの世を去った……。でも、所詮は『死人に口無し』。覇斎さんが実際に犯人だったという証拠はない」
「じゃあ……」
「あぁ、覇斎さんもこの事件のれっきとした被害者……。真犯人によって殺されたんだ」
その瞬間、誰もが息を飲んだ。
まるで推理小説のようなことが実際に起こっているのだ。
鈴道は自分の耳を疑うようにつぶやいた。
「で、でも、“真犯人”だなんて……まさかそんな…」
「でも確かに“真犯人”は存在する。冷酷で、とてもここがキレる奴がね……」
竜彦はそう言って自分のこめかみを小突いてみせた。
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