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再び沈黙が部屋を支配し、暖炉の炎が時折はぜる音のみとなった。
横井川は口を挟むことなく、黙って竜彦の話に聞き入っている。
「でも……」
峰の声が沈黙を破る。
「もし覇斎さんが犯人じゃないのなら、覇斎さんが亡くなった時のことはどう説明するの? あの時は覇斎さん以外の全員がペンションの中にいたはずじゃないんですか?」
峰の指摘する通り、あの時は覇斎以外の全員がダイニングルームに集まっていた。
彼がなかなか来ないことを不審に思った竜彦と鈴道が彼の部屋を訪れた直後、覇斎はペンション近くの丘で果てたのだ。
つまり、あの時誰もが覇斎を殺害することはおろか、触れることさえ不可能だった。
「確かに、俺達全員にアリバイはありました……」
竜彦は窓の外に目をやりながら言った。
「そして、部屋で見つかったあの遺書……。筋がいくらか通ったその内容からしても、俺も最初は覇斎さんが犯人なんだと思いました」
「ほら、やっぱりそうでしょ……?」
少しばかり勝ち誇ったような口調の峰。
「でもですね……よくよく考えると、おかしな話なんですよ」
「……おかしな話?」
「えぇ。全てが出来過ぎてるんです。俺が行く先々で見つけた証拠全てが覇斎さんが犯人だと指し示してる。そう、まるで……誰か別の人間が道しるべとして置いて行ったかのように」
そのセリフに鈴道と竜江はお互いに目を合わせた。
「……例えばどんなことなんです?」
「そうですね、例えば……」
すると竜彦はポケットに手を入れ、中からある物を取り出してみせた。
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