4119人が本棚に入れています
本棚に追加
「コレです」
楠伊はよく見えないというふうに、頭を近付けて目を細めた。
「それは……タバコの吸い殻かね」
「えぇ、これは覇斎さんが吸ったものです。問題は、これが見つかった場所……」
竜彦は見せしめのようにそれをガラスのテーブルに置いた。
潰れた吸い殻から落ちた灰が美しいガラスの表面を汚す。
「これが見つかったのは、麻倉さんの部屋……それも、真っ二つにされたノートパソコンの下敷きにされてました。これがどういうことかわかりますか?」
他の者たちは困った様子で互いに目を合わせ、再び竜彦に視線を向けた。
「いや……どういうことなんですか?」
“もったいぶらずに早く話せ”と言わんばかりに尋ねる鈴道。
「麻倉さんの部屋が何者かによって荒らされたのはご承知の通り……ノートパソコンが真っ二つにされたのも、おそらくその時でしょう。つまり、その吸い殻は部屋が荒らされる前にそこに置かれた可能性が非常に高い」
麻倉がまだ部屋にいる時に覇斎が吸い殻を置いたのならば、彼女はきっとそれを捨てるなりしただろうし、部屋が荒らされた後に置かれたものならば、真っ二つにされたノートパソコンの下敷きになっているのはおかしい。
よって、その吸い殻は麻倉が部屋を離れた後、そして部屋が荒らされる前に置かれた可能性が高い。
特に、その部屋を荒らした張本人が置いた可能性が。
竜彦はそう推理したのだ。
「この事を覇斎さんに告げると、彼は自供しました。“部屋を荒らした犯人は俺だ”ってね」
「じゃあ、やっぱり彼が君を襲い、麻倉さんを殺したんじゃないか」
楠伊は確信を持ったようにそう指摘した。
最初のコメントを投稿しよう!