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その言葉に竜彦は思わず笑ってしまった。
「そうです、俺もそう思ってました。でも、覇斎さんは断固として否定したんです。“部屋を荒らしたのは俺だが、あんな脅迫文を書いたり麻倉を殺したりしたのは俺じゃない”って……」
「それは言い逃れだろ。犯罪者なら誰でも言うぞ」
「ところが、です。よくよく考えてみると、ある事に気がついたんです。ある事に……」
そう言うと、竜彦はテーブルの上に置いてあった吸い殻をヒョイと取り上げ、火を消すようにグイグイとそれをテーブルに押しつけた。
「これが見つかった場所には、“焦げ跡”がなかったんですよ。それはおろか、他のどの場所にもなかった」
楠伊はしばし考え込んだ。
「……つまり?」
「覇斎さんの吸い殻を“後から誰かが故意にあそこに置いた”ってことですよ!!」
「!!」
この時竜彦はある人物の顔一点を見ていた。
その人物が次々と暴かれていく真実にどう反応するか、竜彦はそこだけに意識を集中した。
「じゃ、じゃあ、その“故意に置いた人物”っていうのが……」
「えぇ、今回の事件の真犯人です」
一時部屋が騒然とするなか、横井川は腕を組んで興味深そうにこちらを見ている。
「二見さん……!!」
竜江は不安げに尋ねた。
「その真犯人ってのは一体誰なんですか!?」
「それがですね……実はこの部屋にいちゃったりするんですよね、真犯人」
「!?」
その瞬間、誰もが自分の隣にいる人物に顔を向け、疑心暗鬼に眉をしかめた。
そんな光景を前に、竜彦は一度肺の中の空気を入れ替えた。
これからが正念場なのだ。
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