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「俺もそう思って実際に丘の上に行きました……。あそこからは覇斎さんの部屋が窓越しに筒抜けで、しかも猟銃で狙えない距離というわけでもありませんでしたよ」
「………」
竜彦の先を行く反論に楠伊はそれ以上何も言わなくなった。
「後は、あの爆発音のどさくさに紛れて、覇斎さんの部屋に入った時に、こっそりとテーブルの上に事前にタイプしておいた遺書を置いておけばいい……」
反論の余地がない、華麗と言ってもいい程のその推理に他の者は納得せざるをえなかった。
「じゃ、じゃあ、覇斎さんが殺意を抱いたその犯人は一体誰なの!?」
待ち切れんとばかりにわめく蓮。
そろそろだな……。
竜彦は意を決したように、一度深呼吸をしてから結論を述べ始めた。
「その答えは、夕食の時のことをもう一度思い出してみれば自ずとわかるはずだ。覇斎さんの様子を見に部屋に行って、覇斎さんが窓を通して一番最初に目にした人物……」
その瞬間、時計の針はいつもより遅く動いて見えた。
「あなたが……犯人ですよね……?」
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