4118人が本棚に入れています
本棚に追加
あくまで自分は犯人じゃないと言い張るつもりか……。
ま、そりゃ普通はそうだろうな。
竜彦は話をはぐらかそうとするこの男を無視して、自分の辿り着いた結論を述べていく方が賢明な策だと判断した。
そうすればあの男もいつまでもしらばっくれる事は出来ないはずだ。
「夕食の時、あんたは覇斎さんの様子を見てくると言って1人ダイニングルームを出て行った。彼が自分のことを狙っていると予想しながらね」
竜彦は淡々と話を続けた。
「しかし、俺が同行するって言った時、あんたは内心焦ったはずだ。なぜなら、もし俺があんたよりも先に部屋に入ったりしたら、覇斎さんの計画はたちまち狂ってしまうからね」
「でも、結局竜彦は付いて行ったんでしょ?」
と蓮。
「あぁ。俺ひとりだったから、まだ対処の余裕はあると踏んだんだ。あの時俺は気にかけなかったけど、部屋に入る時、あんたはさりげなく俺を脇に押し寄せてから部屋に入った……。自分1人しか部屋に来ていないことを覇斎さんにアピールするためだろう」
「そっか……。竜彦も一緒にいたら撃ちにくいもんね」
自分に関係なくどんどん展開していく推理に鈴道は焦る様子もなく、黙って竜彦の話に耳を傾けていた。
「あんたは俺が警官だと知ってから、次々に俺の前に覇斎さんへと繋がる証拠品を残していった。麻倉さんの部屋で見つけた吸い殻といい、ベッドで見つけた赤いペンキのついたライターといい、暖炉で見つけたメモリースティックといい……」
今思えば、その全てが覇斎さんにあらぬ疑いをもたらしていたのだ。
この事件の犯人がそんなヘマをするほどバカではないという事に早々に気付いていれば……。
竜彦は今になって後悔していた。
最初のコメントを投稿しよう!