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だが、今はそれよりも目の前のこの男に自らの罪を全て懺悔させるのが先決だ。
竜彦は再び意識を集中させた。
「……あんたは俺達をうまく誘導して、覇斎さんに疑いをかけることに成功したってわけだ」
すると突然、鈴道の喉の奥の方から低い笑い声が聞こえてきた。
やがて彼は口角を左右に大きく引きつらせ、悪魔のごとく不気味な笑みをみせたが、すぐにそれを消した。
「すみません……あまりにおかしくて…」
「何がですか?」
竜彦が鋭く聞き返す。
「二見さんはどうしても私を犯人に仕立てあげたいんですね……。そりゃ、確かに今言った方法だと私にも覇斎が殺せなくはない」
鈴道は首を振った。
「しかし……あの時私はこのペンションのオーナーとして当然の行動をしたまでで、二見さんのそれは単なる考え過ぎだ。第一、昨日の麻倉さんが亡くなった時だって……」
「あなたにはアリバイがあった……?」
竜彦の言葉に鈴道は深くうなずく。
彼がいずれ昨日の夜の事件について話をふることは竜彦にも容易に想像がついたため、その材料はきちんと用意してあった。
問題は、相手の付け入る隙のないように確実に述べることが出来るかどうか、ということだ。
竜彦はその点に細心の注意を払いながら、次の段階へと進んだ。
「鈴道さん……。俺がその謎を解明しないままあなたを犯人呼ばわりするわけないでしょう」
「!!」
鈴道の顔から咄嗟に笑みが消え失せる。
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