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「なら、私がどうやって二見さんを襲ったって言うんです? あの時、私は灯台であなたを見つけるとすぐにそこの香角さんに知らせに行ったんですよ? あなたを襲う暇なんてなかった……それは二見さんが一番ご存じでしょう!?」
ふと脇に目をやると、そこには不本意ながらも鈴道の主張は正しいと言いたげにうなずく蓮の姿があった。
だが、心配には及ばない……。
そう目で合図すると、竜彦は再び視線を鈴道に戻し、顔色一つ変えずに説明を続けた。
「そう、それがまさしくあんたの狙いだったんだ……」
「狙い……?」
「あぁ……。そもそも、人に見つかる危険を犯してまであんたが俺を拉致して灯台まで運んだのには、2つの理由があった」
竜彦は右手で“ピース”の形を作り、それを強調してみせた。
「ひとつは、俺という人間を介して、他の人達の頭に『二面相の男』という存在を刷り込ませること……。そうすれば、疑いが自分に向けられる心配はないからね」
鈴道以外の人間は皆一様にしてうなずいた。
自分の狙いをものの見事に言い当てられていることを心外に感じているのか、彼だけは1人面白くなさそうな表情をしている。
「最初あんたはこの役を楠伊さんにさせるはずだった……そうでしょう?」
「わ、私がか!?」
楠伊は突拍子もない事を言われたように目を丸くした。
「宿泊客の中でも、“医者”である楠伊さんが『二面相の男に襲われた』なんて証言しても、誰も疑ったりはしない……。しかしそこに俺が現れたわけです。“医者”よりも信頼性の高い“警官”という職業の俺に、あなたが目をつけないはずはない」
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