真相〈1〉

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「えっ、竜彦……それってつまり……」 「そう……あの時俺を背後から襲った人物は、紛れもない麻倉さん本人だったんだ!!」 竜彦が言い放った衝撃の事実に、他の者は目を丸くした。 犯人が隠し通路を使用していないことに気付くと、竜彦はある事実に気がついた。 あの時、自分を背後から襲った人物は、自分が意識を取り戻すずっと前から後ろに隠れていたのではないか、という事実である。 そうすると、おかしなことに、竜彦の目の前にいた鈴道はその人物とも面と向かっていたということになる。 しかし何も反応を示さなかったということは即ち、鈴道とその背後にいた人物とはグルだったということだ。 「あんたと麻倉さんはグルだったんだ。この島の阿片が喉から手が出るほど欲しかった麻倉さんに、おそらくあんたは、俺に『二面相の男』の存在を信じ込ませることで部外者を島から追い出そうなどと言って近付いたんだろう」 これが図星だったのか、鈴道は眉の辺りを少しばかり引きつらせた。 「何も知らない麻倉さんはそれを承諾し、あんたは彼女を殺害することに成功したどころか、自分の完璧なアリバイまで手に入れたってわけさ」 それぞれが納得したようにうなずく中、楠伊だけは1人腑に落ちないような顔をしている。 「しかし……」 彼は疑問を竜彦にぶつけた。 「例え彼女が共犯者だったとしても、おかしくないか?」 「“おかしい”とは?」 竜彦は次に楠伊が発するであろう事の内容を予想しながら聞き返した。
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