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「鈴道くんは君を発見するとすぐに香角くんに連絡しに行ったんだろう? その間に彼女を殺害して、あんな風に縛り付けておくというのは到底無理だと思うが……」
「時間的に、ということですね?」
「あぁ……。それに、彼女は猟銃で撃たれていたんだ。いくら大雨とはいえ、発砲でもすれば周りにいた者もいくらなんでも気付くと思うが……」
ふと鈴道に目をやると、“全くその通りだ”と言いたげな顔がそこにはあった。
しかし、竜彦もそこまでは用意していなかったというわけではもちろんなかった。
楠伊の指摘に対する答えは既に掴んでいたのだ。
「そうなんです。俺もそこでつまずいたんです。あの短時間で麻倉さんを殺害するの不可能だと……。でも、よくよく考えてみれば、ある事に気がついたんです。そのきっかけを与えてくれたのが……」
そう言うと竜彦は窓際に歩み寄り、閉めてあった白いレースのカーテンを思い切り開けた。
「……さっき止んでしまった『雨』です」
「雨……?」
台風が通過したことで雨は既にあがっていたが、窓に付着したたくさんの水滴が、つい数時間前まで降っていたことを物語っている。
「今回の台風による大雨が降り出したのは、昨日の7時頃……ちょうど夕食が始まる頃だった。さすがの犯人にも、何時に雨が降るかまではわからなかったんだろう、あるミスを犯してしまったんだ」
「ミス?」
「あぁ。鈴道さん……あんたが灯台で俺を発見した時のことをよぉく思い出してみてくれ。自分の犯したミスに気付くはずだ……」
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