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「しかしあの時既に彼女は死んでいたというわけか……」
「そうです。あんたはオーナーという立場を利用して、自分が灯台に行けるよう割り振ったんでしょう?」
竜彦は鈴道にそう問い掛けたが、彼は何も言わず、ただじっと椅子の背もたれの辺りに視線を投げ掛けている。
「灯台に到着したあんたは、まず誰よりも先に灯台の中へ入って行った。他の誰かに先に入られたらこのトリックは立ち所に破綻するからね……。そして数分見計らってから、あたかも気絶した俺を発見したかのように外に飛び出して、蓮たちに知らせる」
「………」
「実際にはその時気絶していた俺は当然、目の前にあんたが現れた時間がその時だと錯覚するし、蓮たちも当然、あんたが俺を初めて発見したのがその時だと思い込む……」
しばらくして、ようやく竜彦の言葉が理解できたのか、何度もうなずきながら蓮が合点のポーズをとってみせた。
「なるほど……。それで“事件は2回起こった”なのね」
「結果的には、俺達の勝手な思い込みがあんたの完璧なアリバイを作ってたってわけさ……。ざっとこんなもんでしょう、鈴道さん」
鈴道は反射的に顔をあげ、無表情な顔をこちらに向けた。
が、すぐに口元に笑みが作られ、静かに口を開いた。
「なるほど……。確かにそうすると、私に犯行は可能ということになりますね」
「いや、あなたにしか出来ないことなんです」
先程までよりも強めの口調でそう言い放った竜彦に、鈴道は口元の笑みを消した。
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