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「あの時俺もおかしいとは思ってました。別に親しいわけでもないのに、あの日麻倉さんが俺を捕まえて、『二面相の男』の話を無理矢理聞かせたのを……。それも、おそらくあんたの指示だったんでしょう……?」
「…竜彦の頭の中に『二面相の男』の存在を植え付けるため……?」
蓮のその的確な読みに、竜彦は満足げにうなずいた。
その反面鈴道はというと、冷えた金属のように冷たい視線を放ちながら、よそよそしく振る舞っている。
「“私にしか出来ない”ですか……。そんなこと言って私を犯人と決め付けておいて……最後になって『間違ってました』じゃ、いくら警官でも許されませんよ……?」
彼の挑むような口調にも、竜彦は全くひるむことなかった。
いや、むしろ、自分が犯人だとわかっていながらそんな無責任な事を言う確信犯的なその態度に、憤りさえ感じた。
拳を固め、何とか理性を保てるよう自分を抑える。
「言ったはずですよ? 鈴道さん……。俺はこの事件の真相を明らかにするって……。後戻りなしの、真剣勝負なんですから」
その言葉通り、竜彦は挑むような目付きで鈴道と睨み合った。
彼と自分の一対一の勝負……。
……しかしそれはあまり長引くことのない勝負のように見えた。
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