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「だが、ここでちょっとしたトラブルが発生する」
「トラブル……?」
「あんたはこのペンションの備品として買っておいた睡眠薬を使おうとしたらしいが……そこには既に先客がいたんだ」
その言葉の意味が十分に理解されるまで少し間を置くと、不意に峰がハッとして思い出したように言った。
「……それって…私のこと……!?」
竜彦はコクリとうなずいた。
「そう……。麻倉さんが殺されたショックで眠れなくなった峰さんに、竜江さんが睡眠薬を貸していたんです……。そうですよね? 竜江さん」
不意に尋ねられた竜江はしどろもどろになり、うわずりがちになる声を抑えつつ返事した。
「そ、そうです」
「……睡眠薬がなければ楠伊さんを史登さんの看護役から外すことはできない。どうしても睡眠薬が必要だったあんたは、隙を見て峰さんの部屋に忍び込んだ」
「私の部屋に!?」
峰は普段聞き慣れないようなすっとんきょうな声をあげた。
何か見られてはまずいような物が部屋にあったのだろうか。
「だが、睡眠薬を丸ごと盗むわけにはいかない。峰さんがそれに気付いて、疑いの目がペンションの中の人達に向けられては困るからね……。そこで、パッと見わからないようなくらいの量の睡眠薬だけを盗むことにした」
竜彦は親指と人差し指で小さな隙間を作って見せ、それがどれ程少量なのかを強調した。
「しかし、それが裏目に出てしまった……。わずかな量の睡眠薬では十分に楠伊さんを眠らせることはできず、楠伊さんは予定よりも早く起きてしまったんだ」
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