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楠伊はそれを聞くやいなや、眉をひそめた。
「私はいつまで眠り続ける予定だったんだ……?」
あまりに小さな声であったため、彼の言葉は竜彦の耳には届かず、竜彦はそのまま話を進めていった。
「そんな不測の事態に、あんたも多少は焦ったはずだ……。だが、幸か不幸か、計画はさほど狂いはしなかった……いや、むしろ都合のいい方向に曲がっていった」
「都合のいい方向?」
「あぁ…。楠伊さんが一緒にペンションにいることで、自分のアリバイをさらに強固なものにしたんだ。まったく、あんたの頭の回転の良さには感服するよ……」
竜彦はそう言ってちらりと鈴道に目をやったが、動揺することもなく、じっとこちらを見返している。
まぁ、こんなトコで自白されちゃあ、張り合いがないもんな……。
「けど二見さん」
怯えたような声色でそう話しかけてきたのは峰であった。
「あの時ペンションに残ってたとしても、史登さんを灯台まで連れていって、また帰ってくるのはいくらなんでも時間がかかり過ぎじゃないですか?」
すると竜彦は“よくぞ言ってくれた”というふうに峰をゆっくりと指差した。
「そう……それなんです。その謎がどうしても解けなかった」
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