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「そう……巧妙かつ恐ろしいトリックさ。そして、それに気がついたきっかけが、“ある3つの不審点”だった」
「不審点……?」
「えぇ。よく考えてみてください……。俺達がなぜあの時、行方不明になった邦和さんが灯台やその他の場所ではなく、“鐘楼”にいると断定したのか」
すかさず竜江が答える。
「それは、邦和さんの部屋の扉に赤いペンキか何かでそう書いてあったからじゃないですか?」
竜彦はコクリとうなずいた。
あの時、扉に“鐘が血に染まる”と書いてあったのを見て、竜彦たちは咄嗟にそれが島の鐘楼であると判断したのだ。
「その通り……俺達はてっきり鐘楼に邦和さんがいるものと思い込んで向かったんだ……。しかし実際は違った。致死量の血痕以外鐘楼には何もなかった」
致死量に匹敵する血痕が残っているということは即ち、その持ち主は既に死んでいるということである。
つまりあの時既に蔦嶋 邦和はこの世にいなかった、というのは容易に推測がつく。
だが………。
「…そして、邦和さんの遺体はその数時間後にペンションの玄関で無惨な姿で発見された……」
その第一発見者である竜江は、当時の凄惨な光景を思い出したのか、手を口にあてがった。
「……どうですか。変だと思いませんか?」
竜彦はほんの数秒だけ解答する余裕を与えたが、互いに顔を合わせるばかりで誰も答えることはなかった。
代わりに蓮が代表して尋ねる。
「別に……変なところなんてどこも…」
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