4116人が本棚に入れています
本棚に追加
/518ページ
「そうかな? よく考えてみてくれ……。今言った事を整理すると、犯人は邦和さんを鐘楼まで拉致してそこで殺害し、遺体をわざわざペンションまで持ち帰ったということになる」
「!!……そう言われてみれば…変ね」
蓮は小首をかしげた。
「遺体を鐘楼に置いていかずに、わざわざそんな手間のかかる事を犯人はなぜしたのか、ずっと疑問だった……。だが、ふと思ったんだ」
「……何て?」
蓮の問い掛けに、竜彦は一呼吸置いた。
「…犯人は邦和さんの遺体を鐘楼に“置いていかなかった”んじゃなくて、“置いていけなかった”んじゃないかってね」
犯人はれっきとした理由があって彼の遺体をわざわざペンションに持ち帰った可能性が高い……。
いや、そうとしか考えられなかったのだ。
竜彦の考えでは、今回の一連の殺人事件の犯人は、理由のない行動など一切しない人物のように思えてならなかった。
全てが周到に準備されている、言わばこの島は犯人の仕組んだ“舞台”のようなものなのだ。
「これが“ひとつ目の不審点”……。この仮定のもとで捜査を進めましたが……ここで俺は大きな間違いに気付きました」
「間違い?」
「あぁ、蓮も知ってるだろう。鐘楼で、俺が危うく階段から落ちそうになったの」
しばし目を泳がせて、蓮は思い出したように言った。
「あぁ!! 階段が朽ちて踏み外しそうになったアレ?」
「えっ、大丈夫だったんですか二見さん!?」
すかさず竜江が心配そうに尋ねる。
それも当然のことで、万一島の設備で怪我でもすれば、それは管理の不行届きということで、従業員である彼女の責任でもあるからである。
最初のコメントを投稿しよう!