真相〈1〉

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「いえいえ、大丈夫です!!」 それを聞くと、荷がとけたように竜江は胸を撫で下ろした。 「でも……それが何の間違いだっての?」 純粋無垢の子供のような目付きでそう尋ねる蓮を見て、竜彦はふと思い返した。 このことは確か蓮にも喋った内容の話のはずだが……。 「つまりだなぁ、鐘楼のあの階段も吊り橋同様、大人1人でやっとのくらいだったんだよ。誰かを担いで上ろうとすれば、たちまち階段は崩れてしまう……」 「……あの血痕か」 重大な事実に気付いたように、楠伊は目を見開いてつぶやいた。 「そう、つまり鐘楼の上階にあったあの大量の血痕の存在自体がおかしいということになる……。犯人は邦和さんを担いでどうやってあんな高い所まで上ったか? それが無理なら、あの大量の血痕は一体何なのか?」 竜彦はそう問題を投げ掛けておきながら、うやむやにして次の話題へと移った。 「今のが“ふたつ目の不審点”……。そして最後の不審点だが……ここまで来ればもう答えがわかるかな」 「何よ、もったいぶらないで話してよ」 蓮が危なげな忍耐力を操りながら尋ねる。 竜彦はもう一度一呼吸置いてから、おもむろにGパンの後ろのポケットから黒い財布を取り出した。 それを目にした竜江が「あっ」と声をあげる。 「これは邦和さんの財布です。竜江さんが偶然拾ったものですが……問題はその場所…」 そう言うと竜彦は財布をガラステーブルに広げてあった島の見取り図のすぐ横に力強く置いた。
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