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「これが見つかったのは、邦和さんの部屋でも、邦和さん自身からでもなく……史登さんの部屋だった」
その瞬間、他の者たちが竜彦の言った事の指し示す内容を考える中、ひとり鈴道はこめかみに汗を垂らしながら、歯を食いしばるようにしてこちらを睨んでいた。
“してやられた”という様な表情にもとれる。
「以上3つの点から、俺はこの“蔦嶋兄弟殺し”に使われたトリックに気がついたんだ……」
「で、そのトリックというのは……?」
楠伊が息を飲んで尋ねる。
「はい、今から説明しましょう……。
結論から言うと、事件のあった朝、俺達が史登さんの部屋で見つけたあの人物は史登さんではなかった」
「え……!?」
その場にいた者は一様にして驚きの声をあげた。
「え、それって……つまり…」
「そう!! 蔦嶋さん兄弟は、あの朝入れ替わっていたんだ!!」
「!!」
竜彦はちらりと鈴道に目をやった。
トリックの核心部分を強く言い放ったにも関わらず、じっと堪えている。
だが、それも既に時間の問題。
最後の大勝負だ……。
「い、入れ替わっていたって、まさかそんな……!!」
「いや、簡単なことです。じゃあ逆に訊きますけど、史登さんと邦和さんを区別できた要因は何でしたか?」
「それは……」
元々しわだらけの顔を余計しわくちゃにしながら、楠伊は答えを探った。
「…服くらいだ……」
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