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「そうなんです!! 2人を区別できた要因はせいぜい着ていた服くらい。同じ服を着せさせればたちまち区別がつかなくなる……。実にあやふやな要因です」
「うむ……」
楠伊は腕を組んで深くうなずいた。
と突然、「わかった!!」と蓮が声を荒げた。
「あの時ベッドに横たわってたのは実は邦和さんで、本物の史登さんは既に灯台で亡くなってたんじゃ……」
「いや、それは有り得ない」
咄嗟に反論に出る楠伊。
それに合わせて蓮はムッと眉をひそめた。
「灯台に駆け付けた時、彼の遺体からは新鮮な血液が流れ出ていた……。それに、死亡推定時刻もそのつい数分前だったはずだ。彼はまさしく私達が駆け付ける直前に息絶えたんだ」
その冷静かつ的確な反論になす術もなく、蓮はただうなるだけだった。
「しかし……」
まだ腑に落ちないという表情で楠伊が言う。
「考えてみれば、やはり君の言った推理は間違ってやしないか?」
「というと?」
自信満々の様子で切り返す竜彦。
もちろんそれにはワケがあった。
「君の言ったように2人が入れ替わっていたとすると、あの時史登くんの部屋のベッドで横たわっていたのは邦和くんということになる」
口元に笑みを浮かべながら竜彦はうなずく。
「しかし、その同じ時間に鐘楼では君達が邦和くんの大量の血痕を発見している……。これは一体どういうことだ? 確かにあの時、邦和くんには息があったはずだぞ……!?」
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