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「犯人はそこに目をつけたんだ。DNAが一緒なら、鐘楼に残されていた血痕をあとになって警察に調べられても、このトリックがバレることはない……」
そう言うと、竜彦はじっと話に耳を傾けている鈴道に向き直った。
「鈴道さん……あんた自分でこう言いましたよね? 『慶央大学の医学部卒だ』って」
椅子の背もたれにかけられていた鈴道の手に力が入る。
「そんな高学歴持ってんなら、体から血を抜き取るくらい、お手のもんでしょう」
彼が医学部出身だという事実が初耳なのか、竜江や樫崎は目を大きくして鈴道を見た。
しかし当の本人はそれにかまう様子もなく、微かに眉を寄せながら冷たい視線をこちらに投げ掛けている。
竜彦は説明を続けた。
「このトリックを使えば、全てに説明がつく……。今朝の事件の全貌はこうです。
まず夜中のうちに、あんたは史登さんを部屋から拉致して、代わりに邦和さんを史登さんの部屋に連れてくる……。上着一枚でも変えておけば、途端に俺達には見分けがつかなくなってしまうだろう」
「じゃあ……史登さんは灯台に?」
と蓮。
「あぁ。血を4分の1ほど抜き取ってね」
「4分の1……?」
と、困り果てた様子の蓮に、楠伊がその知識をもって助け舟を出した。
「人間は体内の血液のうち半分を失えば必ず死に至る。だが4分の1ぐらいまでなら……」
「失ってもまだ生きていられる?」
楠伊はコクリとうなずいた。
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