真相〈1〉

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「犯人はそこに目をつけたんだ。DNAが一緒なら、鐘楼に残されていた血痕をあとになって警察に調べられても、このトリックがバレることはない……」 そう言うと、竜彦はじっと話に耳を傾けている鈴道に向き直った。 「鈴道さん……あんた自分でこう言いましたよね? 『慶央大学の医学部卒だ』って」 椅子の背もたれにかけられていた鈴道の手に力が入る。 「そんな高学歴持ってんなら、体から血を抜き取るくらい、お手のもんでしょう」 彼が医学部出身だという事実が初耳なのか、竜江や樫崎は目を大きくして鈴道を見た。 しかし当の本人はそれにかまう様子もなく、微かに眉を寄せながら冷たい視線をこちらに投げ掛けている。 竜彦は説明を続けた。 「このトリックを使えば、全てに説明がつく……。今朝の事件の全貌はこうです。 まず夜中のうちに、あんたは史登さんを部屋から拉致して、代わりに邦和さんを史登さんの部屋に連れてくる……。上着一枚でも変えておけば、途端に俺達には見分けがつかなくなってしまうだろう」 「じゃあ……史登さんは灯台に?」 と蓮。 「あぁ。血を4分の1ほど抜き取ってね」 「4分の1……?」 と、困り果てた様子の蓮に、楠伊がその知識をもって助け舟を出した。 「人間は体内の血液のうち半分を失えば必ず死に至る。だが4分の1ぐらいまでなら……」 「失ってもまだ生きていられる?」 楠伊はコクリとうなずいた。
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