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〔2〕
神奈川県警、尾田原署、3階応接室。
おそらく普段は現職の刑事たちが一服するために使っているのだろう、部屋にはタバコのヤニの臭いが立ち込めていた。
竜彦は横井川に案内されて、蓮、岸國の2人とともに応接室に入った。
壁に掛けられている時計に目をやると、針は午前9時40分をさしている。
テーブルを挟んでふたつある革張りのソファーにまず横井川が座り、それに続いて竜彦たちが座った。
ソファーが大きなきしみをたてる。
一度深い溜め息をついてから、横井川が切り出した。
「で、引き出しの奥で見つけた物っていうのは?」
「これです」
と、竜彦は懐から数枚の紙切れを取り出した。
兼谷 充の言った通り、彼の部屋の引き出しにはこの数枚の紙切れが入っていた。
そこにはいろいろな言葉が乱暴に書きなぐられており、そしてそのどれもが全く無関係の言葉のように見えた。
竜彦も、それらが一体何を意味しているのか理解出来なかった。
そして、兼谷がこの紙切れを竜彦に渡した理由も……。
よって、彼の指示通り、竜彦は岸國が何か知っているものと踏んで、今に至っているというわけなのだ。
「なんだこれは?」
紙切れを手に取って、不可解な表情を浮かべる横井川。
「『月が重要な鍵』……? どういう意味なんだ、これは? わしにはさっぱり……」
と、横井川はお手上げというふうにそれを竜彦の手元に返した。
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