本性

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こんなことはなかった     雨が降った   雨は私の気持ちを高揚させた   雨の日には   じっと窓から   点々と落ち続ける雫石を見ていた   普段動かない私も   雨の日には違った   たちまち外へ行き   目的もなくただ歩いた   雨の日には不思議と笑顔になっていた   私は雨の日が大好きだった   雨は私の味方だった       こんなはずではなかった     雨が降った   雨は私を不安へと落としいれた   雨は私の不安な気持ちを増幅させた   雨は私の隙に躊躇なく攻撃してくる   窓から外を見たくない   外に出たい気持ちになれない   まるで私の弱い所を   隠してきた弱い所を   露わにされているようで   自然と笑顔は失われる   前には何もない   いや見えない   全て雨に隠された   雨が私を支配した   もう逃げることも出来ない   残された退路も絶たれた   雨はまだ降り続く   涙が目からこぼれ落ちる   止まることのない涙が   ああ   雨が一つ   増えてしまった     こんなはずでは なかった
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