「紫陽花」

2/2
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/2ページ
それは紫色だった。 初めて見たそれはとても小さく、それでも力強く、膨らみ始めていた。 六月の雨に打たれても、それでも、そこに有り続けた。 いつからか、毎朝それを見ることが習慣になっていた。 雨上がりの朝に、ふと、それに目をやると、大きく体を広げてそこに咲いていた。なんだか嬉しかった...。 まるで清らかな少女の微笑みを見たような優しい、優しい気持になった。 それからしばらく雨の日が続いていた...。 一週間ほど経って、久しぶりの青空の日に、それはもう散っていた 。あの、鮮やかな紫色は、もう見れない。 心にぽっかりと穴があいた様な気持で、今はもう、只々緑色を残すだけの、それを見つめていた。少しだけ切ない心で、僕は日常に戻って行く。 一年後に、また、あの鮮やかな紫色が見れることを心に信じて…。 ~fin~
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!