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それは紫色だった。
初めて見たそれはとても小さく、それでも力強く、膨らみ始めていた。
六月の雨に打たれても、それでも、そこに有り続けた。
いつからか、毎朝それを見ることが習慣になっていた。
雨上がりの朝に、ふと、それに目をやると、大きく体を広げてそこに咲いていた。なんだか嬉しかった...。
まるで清らかな少女の微笑みを見たような優しい、優しい気持になった。
それからしばらく雨の日が続いていた...。
一週間ほど経って、久しぶりの青空の日に、それはもう散っていた
。あの、鮮やかな紫色は、もう見れない。
心にぽっかりと穴があいた様な気持で、今はもう、只々緑色を残すだけの、それを見つめていた。少しだけ切ない心で、僕は日常に戻って行く。
一年後に、また、あの鮮やかな紫色が見れることを心に信じて…。
~fin~
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