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16の夏─
おふくろが死んだ。
一人で俺を産んで、
絵画の先生をしながら育ててくれたおふくろだった。
「真也くん、ちょっと話があるんだ。」
通夜の晩、白髪で立派な口髭をたくわえた紳士がそう話かけてきた。
彼は月に一度訪ねてきていた美大の教授【母の恩師】だった。
〝うちで一緒に暮らそう。お母さんと結婚できなかったけれど私が君の父親なんだよ〟
彼は僕が母の死を一瞬忘れさせるような衝撃の事実をさらりと言った。
頭の中は真っ白な状態で僕はただ、「はい。」と答えていたらしい。
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