●内山くん

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内山くんは系列店にも指名してる娘がいた。 だから、それを口実に 「好きとかみんなに言ってんでしょ」 「付き合おうとか言われても信用できないし」 「別にあんたの好きなようにしたらいいでしょ」 など、私はかなりボロクソ言っていた。 そしたら、彼は 「亜紀に信じてもらえるように頑張る」 と言って店に頻繁に通うようになった。 しかし、ある日を境にぱったりと来なくなった。 私も後で知ったことだけど 内山くんはサラ金で金を借りていた。 そして、返せなくなりどこかの組の舎弟になった。 ヤクザは出入り禁止だから もう連絡は取るな、と店長に言われた。 それ以降、私は彼からの電話が鳴っても出ることはなかった。 さんざんお金を使わせて こんな風に彼の人生をめちゃくちゃにして。 私は人を不幸にしたくてこんな所で働いているのか。 そんなつもりじゃなかった。 そんなつもりじゃなくても 実際そうだった。 私は何かを奪うんじゃなく 何かを与えたかった。 店長に言ったら 「お前がやらなくても 他の誰かに吸い取られてたんだから 気にすることはない。 自分をコントロールできなかった彼が悪い。」 と言われた。 私は割り切れない。 そんな風に思えない。 今でもまだ私は偽善者だ。
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