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ここは小川探偵事務所。
小さな、売れない探偵事務所だ。
所員はたったの三人(と一匹)。
探偵で所長の小川先生と、アシスタント兼雑用の私、海原と、会計兼事務の山内君。あと、ぶち猫のぶったん(命名はもちろん私)。
今日もひまな一日だ。
「あ~ヒマ~。先生も寝てるしー。つまんなーい、つまんなーい!!」
そうわめきながら、私は手足をじたばたさせる。
「うるさいですよ、先輩」
私の向かいの机に座る山内君が、迷惑そうに言いながら顔を上げた。
ムッチャ怒った顔だ。
「え~。だってつまんないものはつまんないもん」
そう文句を垂れると、すかさず山内君が言う。
「そんなにヒマって言うんなら、それ、片付けてください」
山内君が指差したものは、私の机の上に二十cmくらい積まれた書類の山だった。
「うっ……」
(生意気な後輩だ。チビのくせに。160cmしか身長ないくせにっ!私なんか160.5cmもあるんだぞ。5mmも高いんだぞっ!!)
「先輩。今、僕のことチビって思いましたね?」
「えっ、ええ!?そ、そんなことないよ~!!」
(なんでわかりやがったんだ、コンチクショウ!)
「先輩は、思ってることが顔に出やすいんですよ」
(何言ってやがんだ、てやんでぃっ!!)
「だから、顔に出てますって」
「む~~~~~」
私は机に突っ伏してうなる。
山内君は仕事に戻ったらしく、しばらくの間は私のうなり声と、山内君が打つパソコンのキーボードの音と、先生のイビキだけが響いていた。
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