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わけがわからなくて。
目を見開いていると、それはゆっくりと離れていった。
そしてニヤリとした笹川と目が合う。
「ごちそうさん」
「キ、ス……」
“呆然”
今の私にはこの言葉しかない。
自分の唇をなぞって、私は今起きたことを思い出す。
今、私、キス、したの?
笹川と……?
たしかに夢見てきたことだけど、目の前にいるのは私の知らない笹川で。
知らない人にキスされたも同然だった。
再び目に涙が溜まってきた私を見た笹川は、一言“あ”と声を出す。
そして私の肩に手を置くとニヤッとしながら口を開いた。
「これからよろしく」
「っ、よ、よろしくなんてしないっ!」
結局、笹川は笹川です。
一緒に住むっていう現実に、私は顔が真っ赤になるのを感じた。
でもでも、今いる笹川は私の好きな笹川じゃないから。
私は笹川をキッと睨みつけて言い放った。
笹川は一瞬驚いた顔をしたけど、ふっと笑うと私から離れた。
そしてそのまま私の部屋から出て行ってしまった。
「な、なんだった、の……」
あぁ神様。
笹川の本性はどっちですか?
学校での笹川にしてください!
妄想も発動しない頭の中で、私は必死に神様に祈りを捧げていた。
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