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待つこと数秒。
玄関の内側でドタドタと音がしたかと思うと、ゆっくりとドアが開かれた。
「…笹、川……?」
その声にドアを開けた奴を見た瞬間、俺は目を見開いてしまった。
「……は?松田?」
思わず素がでてしまったほど。
あー、これか。
いやな予感の原因。
そう思いながらも、未だに驚きが隠せずにいた時、松田母がありえねえ会話をしだした。
「あんたたち、付き合ってるんでしょ」
その言葉のありえなさに、俺は眉を寄せた。
松田は否定しつつも、満更でもなさそうに顔を赤くしている。
俺は気付かれないように小さくため息をついて口を開いた。
「いえ、ただのクラスメートです」
“ただの”
を強調して言うと、それが通じたのか、松田は泣きわめきながら走り去っていった。
チラリと松田母を見ると、右手を頬にあてて“あら”と言ってる。
「どうしたのかしら……あ、アップルパイ食べる?」
「は?あ、はい」
松田を心配してなさそうな松田母を少し意外に思ったが、よく考えたら理由がわかった。
なんつうか…能天気なんだ、この親子。
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