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「あ、そこに座っててね」
「はあ…」
そそくさと台所に入っていく松田母に、俺は間の抜けた返事で返す。
その間、俺はリビングの飾りを見ながら過ごしていた。
そしてふっと息を吐いた時、にっこりした松田母が台所から出てきた。
「あ、猛くん?」
「はい?」
「陽菜、見てきてもらえる?」
「…………は?」
いや、なんで俺が。
明らかに嫌そうに返したというのに、松田母はにこにこしながら無理矢理俺を立たせる。
「ちょ……」
「いいから、ねっ」
何がいいのかわからねえ…
さすが松田母………
意味のわからなさもそっくりだ。
でもまあ、ここで断って関係がこじれるより、行って仲良くした方が賢明な判断だろう。
1年間一緒に住むんだし。
そう考えた俺は、松田母に負けないくらいの笑顔で返事をした。
「わかりました。見てきますね」
「よろしくね。あ、機嫌良さそうだったらアップルパイあるって言っててもらえる?」
「はい」
俺は頷いて返し、松田の部屋へ向かった。
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