6591人が本棚に入れています
本棚に追加
□
とりあえず2階にあがり、松田の部屋を探………すまでもなかった。
向かって右側の部屋の扉にファンシーな猫の板がかかってて“ひなの部屋(はーと)”と書かれている。
つい呆れ顔になってしまい、少し口が半開きだ。
少し気を取り直し、はぁっと息を吐いてドアを叩いた。
───トントンッ
「いません」
「…いるじゃん」
中から聞こえてきた声に、思わずため息とともに突っ込んでしまった。
その後、俺が何を言っても“いません”の一点張りの松田にいい加減腹が立ってきたわけで。
20回目くらいの“いません”が聞こえた時、俺の頭の中の糸が“プツッ”と音をたてて切れた。
「………チッ………てめぇ、調子乗ってんじゃねえぞ。開けろ、つってんだ」
舌打ちの後からはもう素だ。
俺はもともと短気だし、こんな強情な奴には猫かぶりじゃ通用するわけねえし。
イライラしながら言うと、扉の向こうの空気が凍りついたのがわかった。
最初のコメントを投稿しよう!