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「ただいまーっ」
放課後、お母さんの言いつけ通り、ちゃんと家へ真っ直ぐ帰った私。
玄関の取っ手を回すと、いつもは回らないそれがガチャリと簡単に開いた。
そして、中からドタバタとお母さんが顔を出す。
「おかえりっ、陽菜っ」
「う、うん。てか、今日早いね?」
お母さんの勢いに圧倒されながらそう言うと、お母さんはニマーッとした。
へ、な、何……?
「言ったじゃない!今日、人が来るって」
「それって、瑠璃(ルリ)ちゃんとかじゃないの?」
瑠璃ちゃんは私の二つ上のいとこ。
人って言ったら、瑠璃ちゃんくらいしか思いつかない。
私が首を傾げていると、お母さんは右手を口元にあててウフフッと笑った。
「陽菜、お父さんの会社の社長さん知ってるわよね?」
「うん?」
たしか、お父さんの親友だとかいう……
優しいおじさんだったはず。
あ、もしかして。
「おじさんが来るの?」
それしか思いつかなくてそう言えば、お母さんはふるふると首を横に振った。
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