第一章 「幼なじみ」

3/3
前へ
/5ページ
次へ
 咄嗟の行動だった。  「ガツン!」  頭の芯までズシンとくる衝撃を受けて、僕は地面に倒れ伏した。躰中がジンジンと痺れる。  「遼くん!遼くん!!」  柔らかい両腕が僕を抱き抱える。  「ひどい!遼くんは関係ないよ!」  薫は全身の毛を逆立てた黒猫の様に暴君を睨みつけた。瞳が鋭く妖しく光る。  その迫力にたじろいだ翔太は、口ごもりながら言い訳を始める。  「そ、そいつが飛び出してくるから…。お前を脅かそうとしただけなのに…。」  そうなんだ…。薫がやられる!と思った瞬間、僕の躰は勝手に動き出していた。  二人の間に飛び込んで、翔太の攻撃を受け止めたんだ。  「おい!逃げようぜ!」  「あ、あぁ…。」  悪ガキ軍団は一目散に逃げていった。  やった…。  やった!  初めて薫を守ったんだ。  薄れていく意識の中で、充足感に満たされていた。  「遼くん…。」  可憐な頬が僕の泥だらけの頬に触れる。  唇に流れ込む彼女の涙がしょっぱかった。
/5ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加