1人が本棚に入れています
本棚に追加
咄嗟の行動だった。
「ガツン!」
頭の芯までズシンとくる衝撃を受けて、僕は地面に倒れ伏した。躰中がジンジンと痺れる。
「遼くん!遼くん!!」
柔らかい両腕が僕を抱き抱える。
「ひどい!遼くんは関係ないよ!」
薫は全身の毛を逆立てた黒猫の様に暴君を睨みつけた。瞳が鋭く妖しく光る。
その迫力にたじろいだ翔太は、口ごもりながら言い訳を始める。
「そ、そいつが飛び出してくるから…。お前を脅かそうとしただけなのに…。」
そうなんだ…。薫がやられる!と思った瞬間、僕の躰は勝手に動き出していた。
二人の間に飛び込んで、翔太の攻撃を受け止めたんだ。
「おい!逃げようぜ!」
「あ、あぁ…。」
悪ガキ軍団は一目散に逃げていった。
やった…。
やった!
初めて薫を守ったんだ。
薄れていく意識の中で、充足感に満たされていた。
「遼くん…。」
可憐な頬が僕の泥だらけの頬に触れる。
唇に流れ込む彼女の涙がしょっぱかった。
最初のコメントを投稿しよう!