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その刀身は紅く、まるで生き血を啜るように光りを写す魔宝
crimsonedge
1.
深く広がる森に草を掻き分け走る音が響く。
爪が地面を削り乾いた音が。
「っくそ…!」
長い深蒼の髪を乱し少年は走りながらも剣を振るう。
森に逃げ込んで随分経っていた。もう足に限界が来ている。
「っ…ハァッ…ハァッ…っもっ…しつこいっ!!!!」
走る速度を緩め少し後ろを向くと剣を水平に薙いだ。
その一撃で追いかけて来た狼型の魔獣は全て切り落とされる。
「っ…よし…これで…」
しかし
ガァァァッ
「うっ…あぁぁぁ!!!!」
油断した隙に背後にいた魔獣が飛び掛かり、少年の肩に鋭い牙をさした。
「っうぁぁっ…!」
激しい痛みに目眩を覚えながらも少年は無我夢中で剣を魔獣に当てる。
するとすこし答えたのか魔獣は唸り首を振った。そのせいで少年は吹き飛ばされ近くにあった木に衝突してぐったりと倒れ込んでしまう。
「っ痛…」
立たないと…しかし足が動かない。
「これまでか…」
今度こそ殺られる…そう覚悟し目をつむった…その時だった。
「少年っ、屈め!!」
声がするやいなや少年の頭上を閃光が走る。
ギャンッと魔獣の声が一瞬し…消えた。恐らく息絶えたのだろう。
「な…に…?」
顔を恐る恐る上げるとそこには20歳程に見える男が立っていた。
金髪で長身、赤い襟の高い服を着ている。顔に独特な傷のような模様があった。どこかの傭兵だろうか。
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