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「ねぇ、ともひろ……世界が、もし、自分の思い通りに操れるとしたら、どうする?」
世界が、自分の思い通り?
考えたこともない。そんなの阿呆の吐く妄言だ。世界はただ常に平坦で、何もかもがありふれていて、ただ苦しいのだから……この世界に都合の良い事など存在しない。世界はそう出来ているのだから……なのに……
「世界を操るだって?いきなり何を言っているんだよ?お前は……」
「そうだね。無論。ボクも、そんなこと出来るだなんて本気で思ってはいないよ。ただ聞いてみたかっただけ。ごめんね。突然、変なこと聞いて……」
「いや、別に謝ることはないさ」
「ねぇ、ともひろ……」
アイーシャが何だか弱々しい声で尋ねてくる。
「何?」
僕は聞き返した。
「幸せになれるといいね」
「ああ」
本当にそうなれたらいい。
「また会おう。ともひろ……」
「ああ」
そうだな。アイーシャ……
僕は空を見上げる。
空はただ、ひたすらに紅い。
痛々しい程に……
まるで空が血を流しているようだ。
僕にはそれが一体、何故なのか分からないのだけど……
空はただ、ひたすらに紅かった……
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